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.1.地球温暖化問題
21世紀においては,あらゆる生産活動は「環境への配慮」を無視してはありえない.鋼橋も例外ではなく,環境問題への積極的な取り組みが重要であると考えられる.
とくに,地球温暖化は,人の活動に伴って発生する温室効果ガス(二酸化炭素,メタンなど6物質)により,地表および大気の温度が上昇し,生態系や気象に深刻な影響をおよぼす重要な問題である.「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では,このままの状況が続けば,100年後には平均気温が2℃上昇し,海面が50cm上昇すると予測しており,生物・水資源・食料生産・洪水・高潮・健康などの分野で大きな影響が懸念される.
この地球温暖化問題に対処するため,先進国の温室効果ガスの排出量に関し,法的拘束力のある数値目標を盛り込んだ「京都議定書」が採択され,我が国においては「温室効果ガスの総排出量を2012年までに1990年レベルから6%削減する」との目標が定められた.
これらの背景を考慮し,鋼橋技術研究会環境問題研究部会では鋼橋建設に関する二酸化炭素の排出量を算出し,さらに環境に優しい鋼橋のありかたについて研究している.
2.鋼橋建設時の二酸化炭素排出量
橋梁の環境負荷については,土木学会の環境負荷評価(LCA)委員会1)や伊藤義人ら2)3)により研究されている.その一例として,3種類の橋梁形式について,橋長150mの橋梁を建設するに要するエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を比較した研究結果を表-1に示す.
表-1 環境負荷値の比較2)
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橋梁形式
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スパン割
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Energy消費
(
x 109 kcal )
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CO2排出量
(
tC )
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工費
(億円)
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PC単純プレテンT桁
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8
@ 18.8m
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3.03
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322.9
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1.66
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PC単純箱桁
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3
@ 50.0m
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3.00
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289.6
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2.79
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鋼単純非合成桁
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3
@ 50.0m
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5.79
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539.2
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3.42
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これによれば,鋼橋はエネルギー消費量,二酸化炭素排出量,工費のいずれにおいても,PC橋より劣ると言わざるを得ない.これらの算定には,コンクリートのエネルギー原単位(単位量を生産する際に使用されるエネルギー)を1900
kcal/kg,鋼のエネルギー原単位を4000-5000 kcal/kg,コンクリートの二酸化炭素排出量原単位(単位量を生産する際に排出される二酸化炭素量)を0.0361
kgC/kg,鋼の二酸化炭素排出量原単位を0.411 kgC/kgとしている.比強度の関係があり,この数値のみから単純に鋼材が不利とは言えないが,鋼材の環境負荷は少なくないと言える.
しかし,表-1の結果に対しては,鋼橋からの改善策が考えられる.すなわち,スパン50mの鋼橋としては単純非合成I桁ではなく,連続合成2主I桁を適用する方が使用鋼材も少なく,環境負荷も小さいと考えられる.現在,環境部会で検討中であるが,この合理化桁の二酸化炭素排出量は単純合成桁の半分以下に削減できると予測している.
また,既存の研究においては,主に使用材料のみに着目しており,工場製作や現場施工に伴う環境負荷は十分には考慮されていない.これに関しても環境問題部会で研究中であるが,全体の排出量に対し,鋼材が約60%,溶接・塗装・施工などが約10%,コンクリート床版が約30%である.このように,鋼材およびコンクリートがほとんどを占め,製作・施工時は環境負荷が低いと予想される.
3.鋼橋のライフサイクル評価
鋼橋の環境負荷を評価するためには,建設時の材料・製作・施工のみならず,完成後の維持管理・補修,さらには撤去およびリサイクルの全過程における環境負荷,すなわちLCA ( Life Cycle Assessment )を実施しなければならない.伊藤らの研究3)によれば,部材劣化がやや早い場合には,完成後の維持管理・撤去に関する環境負荷は建設時に匹敵するほどである.したがって,耐久性の向上,維持管理の軽減,リサイクルにも十分配慮すべきである.
鋼橋の利点は,リサイクルが可能であることである.橋を架け替える場合,橋そのものを改造することができる.また,解体する場合にも,鋼材は電炉材料として再利用できる.なお,電炉材の二酸化炭素排出量は,高炉材の約30%と環境負荷の低い材料である.このように,鋼橋はリサイクル性の高い製品と言える.
4.環境に優しい鋼橋
以上は,主に二酸化炭素排出量に関して説明したが,鋼橋をとりまく環境問題は広範囲にわたる.そこで,「環境に優しい鋼橋」を設計するためのポイントを以下に示す
(1)使用材料はなるべく少なくする.また,各生産過程の省エネルギー化や二酸化炭素排出量の抑制を図る.
(2)維持管理が少ない材料や構造を選ぶ.たとえば,省補剛桁,亜鉛メッキ橋,耐候性鋼材の利用,上下部一体構造により伸縮装置や支承を避ける,などの方策が考えられる.
(3)撤去および改造しやすい構造とする.
(4)資源のリサイクルを図る.電炉材の利用,コンクリートの再利用,橋そのものの再利用などが考えられる.
(5)車の排気ガスによる大気汚染を避ける工夫をする.とくに,車の渋滞が大気汚染の原因であるため,道路や橋の立体交差化が有効である.さらに,排気ガス回収装置などを組み込んだ橋は考えられないだろうか.
(6)自動車や列車走行時の騒音・振動問題などを改善する.制振鋼板の利用,効果的な防音・防振壁の設置,連続化構造,上下部一体構造などが考えられる.また,施工時の騒音・振動対策も重要である.
(7)景観に配慮することも環境問題のひとつである.シンボル的な形式の橋,化粧板,遮音壁の形状や色彩などを活用すべきである.
(8)鋼橋の緑化を図ることは,景観面・二酸化炭素の削減にも有効である.中央分離帯の植え込み,路肩に植生するなどが考えられる.
最後に,環境に配慮した鋼橋のイラスト4)を示す.ひとつのアイデアとして,参考にしていただければ幸いである.
参考文献
1)土木学会地球環境委員会,環境負荷(LCA)評価検討小委員会:土木建設業における環境負荷評価(LCA)検討部会,平成7年度調査研究報告書.
2)伊藤義人ら:環境負荷を考慮した橋梁形式選定支援システムの作成と利用に関する研究,土木学会論文集,No.553
/ VI-33,187-199,1996.12.
3)伊藤義人ら:地球環境負荷削減のための橋梁ライフサイクル評価に関する研究,構造工学論文集,Vol.45A,1295-1305,1999.3.
4)濱博三:CGによる橋梁デザインに関する研究,東海大学卒業論文,2000.3.
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